ビジネス×行動経済学

行動経済学や行動心理学など行動科学の理論やバイアスをビジネスに適用することを目的にしたブログです

インバウンド×行動経済学

皆さん、こんにちは。
本ブログは行動経済学を実際のビジネスに適用していくことを主目的としています。

行動経済学の理論を中心に、認知心理学社会心理学などの要素も交え、ビジネスの様々なシーンやプロセス、フレームワークに適用し、実際のビジネスでどのように活用できるかを考察していきます。

 

インバウンド市場の復活と成長

今回はインバウンドと行動経済学の関係性について探求していきたいと思います。

コロナ禍で急激に冷え込んでいた日本のインバウンド市場が再び活気づいています。
統計によると、2023年には市場規模が2019年を超え、2024年には8兆円規模に達する見込みで、これは、インバウンド市場が急速に回復し、今後も継続的に成長する可能性があることを示しています。
また、政府は2030年までに市場を15兆円規模に拡大することを目標としており、これは2013年の1.4兆円と比較して約5.7倍の成長を意味しています。

newspicks.com

 

また、人数という点でも現時点は3,000万人/年という状況だそうで、2030年には6,000万人/年にするのが政府目標とのことですが、その後も元々の試算である年間3、4%の伸び率が継続できれば2050年には1億人を突破するだろうとも見込まれているようです。

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インバウンド観光の新たなトレンド

しかし、現在のインバウンド市場は、コロナ前と比較して大きく変化しています。

かつては「爆買い」に象徴される「モノ消費」が中心でしたが、現在は「コト消費」へのシフトが顕著になっています。
訪日観光客は単に商品を購入するだけでなく、日本ならではの体験やサービスを求める傾向が強まっていますが、例えば、伝統的な茶道体験や高級和食の料理教室がその一例です。
また、贅沢な消費もコロナ後のインバウンドにおいて象徴的で、「豊洲 千客万来」の1万8000円にもなる海鮮丼「インバウン丼」が話題になりましたが、それを上回る2万2000円のウニ丼など様々な高額海鮮丼がでてきるようです。

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異なる点という意味では、観光客の出身国の変化も見られるようです。
コロナ前は「爆買い」の象徴的存在でもあった中国人観光客が全体の30%を占めていましたが、現在ではその割合が10%に減少し、韓国や台湾、その他のアジア諸国からの観光客が増加しているそうです。

 

しかし「コト消費」に軸が移る一方で「専門店売上高が最高に、訪日客増で宝飾・ドラッグ好調」という記事もあり、「モノ消費」も好調な様子がうかがえます。

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円安の影響と今後の円高傾向

長らく続いた円安がインバウンド市場の復活と成長に寄与していることは疑いようがないかと思います。
先の海鮮丼の例以外にも、吉野家の牛丼並盛りが日本円では値上がりしていますが、ドルベースでは円安の影響で相対的に安価になっています。

 

しかし、一時期は160円まで下がった円も、現在は145円程度と円高傾向にあります。

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今後もインバウンド市場が活況を継続させるには、円安頼みでない施策が求められます。

 

行動経済学から見たビジネスチャンス

では、インバウンド市場の活況をどう継続させるかを行動経済学の視点から見てみたいと思います。
インバウンド市場は「コト消費」の傾向が強まっているため、訪日観光客への体験型サービスの提供が今後も有効ですが、以下に、行動経済学の理論やバイアスを活用した具体的なビジネスチャンスを5つ紹介します。

 

1. 希少性の原理(Scarcity Principle)

希少であると感じるものには価値があると認識される傾向があります。
希少というのは、何も数量だけの話しではなく、期間限定の体験や、特定の時期にしか味わえない、またはそこでしか体験できない観光スポットをアピールすることで、訪日観光客の消費・購買意欲を高めることができます。
例としては、季節限定の祭りやイベントを強調したり、他では味わえない季節限定の風景や自然現象をアピールすることで、訪問を促進することができます。

2. 損失回避 (Loss Aversion)

人々は利益を得るよりも損失を避けることに強い動機を持つという理論ですが、例えば、「今予約しないと満席になる可能性が高い」などのメッセージを用いることで、早期予約を促すことができます。
これは、ECサイトなどでもありますが「残り〇組」などと表示し、切迫感をアピールすることで来客を促すものです。
ただ、最近飲食店などで予約の当日無断キャンセルなども問題になっているので、予約時に前払いにする、または半金いただいておくなどの工夫は必要です。

3. フレーミング効果(Framing Effect)

情報の提示方法が異なると、同じ内容でも受け手の印象は変わります。
インバウンド向けのマーケティングにおいては、価格やサービス内容の提示方法に工夫を凝らすことで、訪日観光客の消費意欲を高めることができます。
例えば、「○○○年続く伝統工芸を体験できる」や「旅先の疲れを癒す」などといったフレーミングや、最近だとコロナ患者が増加傾向にあるので、「少人数限定」などというフレーミングで安全性を強調すると、訪日観光客にとっての価値がより明確になります。

4. アンカリング効果(Anchoring Effect)

「アンカリング効果」は初めて見た情報がその後の判断に強い影響を与えることを指しますが、高級なホテルやレストランの価格を先に提示し、その後に手頃な価格帯の選択肢を提示することで、訪日観光客に対する価格の相対的な印象を操作することができます。
また、同一店舗・施設内でも先に価格帯の高い商品やサービスをみせておき、その後に本当に消費してもらいたい商品やサービスをみせることにより、価格手ごろ感を得られ、商品やサービスがよりお得に感じられるようになります。

 

5. 社会的証明(Social Proof)

社会的証明(Social Proof)は、他人が選択したものを自分も選びたくなるという心理的効果ですが、自分(の情報)に自信がない時ほど大きな効果を発揮します。
そのため、口コミやレビュー、SNSでのシェアを活用し、人気のある観光スポットや体験をアピールすることで、新たな観光客を引き寄せることができます。
したがって、口コミやレビュー、SNSでのシェアなどをしてくれた訪日観光客には、何かしら特典が付くような施策が有効です。
もちろん、インフルエンサーを活用したプロモーションも効果的ではありますが、ステルスマーケティングとの境界線などに気をつけながら活用する必要があります。

さらに、サービスの質を向上させるためには、「期待理論」を活用することも考えられます。これは、顧客の期待を上回るサービスを提供する、いい意味で顧客の期待を裏切ることで、リピーターや口コミを増やす戦略です。
そういった「ファン」とも呼べる顧客を増やしていくことが、社会的証明効果の増大に繋がります。

 

これらの行動経済学の理論やバイアスを活用することで、訪日観光客の行動を理解し、より効果的且つ円高・円安に左右されないマーケティング戦略を構築することが可能です。
特に、訪日観光客が求める「コト消費」に焦点を当てた体験型サービスの提供や、心理的バイアスを利用した価格戦略は、企業の成長を後押しする重要な要素となるでしょう。

 

まとめ

インバウンド市場の復活と成長に伴い、行動経済学の視点からどのようにビジネスチャンスを捉え、観光業において成功を収めるかを考察しました。
コロナ禍を経て「モノ消費」から「コト消費」へとシフトする訪日観光客のニーズに対応するためには、希少性の原理や損失回避、フレーミング効果、アンカリング効果、社会的証明といった心理的バイアスを活用することが有効です。
また、円高・円安に依存しない施策を展開し、顧客の期待を超えるサービスを提供することで、リピーターの獲得や口コミの増加を図り、持続可能な市場成長を目指すことが求められます。
これらの戦略を駆使して、個々がインバウンド市場における競争力を高めていけば、長期的な成功を手にしていけるのではないかと思います。

インバウンド×行動経済学(DALL・Eで作成)

 

さて、今回はここまでとします。
次回の更新は8/19(月)10:00の予定です。お楽しみに!