ビジネス×行動経済学

行動経済学や行動心理学など行動科学の理論やバイアスをビジネスに適用することを目的にしたブログです

【コラム㉖】 タイパと損失回避?行動科学で見るコインランドリー躍進の秘密

皆さん、こんにちは。
本ブログは行動経済学を実際のビジネスに適用していくことを主目的としています。

行動経済学の理論を中心に、行動心理学や認知心理学などの要素も交え、ビジネスの様々なシーンやプロセス、フレームワークに適用し、実践に役立てていきたいと思っています。

 

日本経済新聞に以下の記事にが掲載されていました。

www.nikkei.com

確かに、最近はクリーニング店よりコインランドリーの方を多く見かけるようになったな、とは感じていましたが、日本経済新聞の記事によると、実際に2021年にコインランドリーの店舗数がクリーニング店を上回っていたそうです。

今回のコラムでは、コインランドリーが躍進する原因やきっかけを行動経済学や行動心理学の観点から探求してみたいと思います。

 

はじめに

日本における洗濯事情は、昭和、平成、令和と時代が進むにつれて大きな変化を遂げています。昭和時代には家庭での洗濯が主流で、特に専業主婦が家事の中心的な役割を担っていました。洗濯機は「三種の神器」の一つとして広まり、多くの家庭で使われるようになりました。しかし、クリーニング店が昭和初期に登場し、プロの手によって洗濯を任せるという選択肢が増えると、特にビジネスマンのスーツやフォーマルな衣服のケアにクリーニング店が利用されるようになりました。

一方、コインランドリーは昭和30年代に誕生し、最初は学生や独身者など、家庭に洗濯機を持たない人々に向けたサービスとして広まりました。平成に入ると、共働き世帯が増加し、家庭外での洗濯ニーズが拡大しました。そして令和に入ると、コインランドリーの店舗数は急激に増加し、ついにクリーニング店を上回るようになりました。

 

クリーニングとコインランドリーの誕生とその背景

クリーニング店は、日本で1950年代に普及し始め、特にスーツや高価な衣類をケアするために利用されるようになりました。当時は白黒テレビ、冷蔵庫とともに、家庭に洗濯機がないことも多く、クリーニング店の役割は非常に重要でした。家庭での洗濯が一般化すると、クリーニング店は主にプロの技術が必要な洗濯物を扱うようにシフトしていきました。

一方で、コインランドリーは1950年代後半に登場しました。当初は独身者や学生が主な利用者であり、銭湯に併設されたものも多かったです。しかし、時代が進むにつれて、共働き世帯や時間を効率よく使いたい家庭にとっても便利な選択肢として拡大していきました。そして、生活スタイルの変化や技術の進化とともに、コインランドリーは今や家庭での洗濯やクリーニングに次ぐ第三の選択肢として定着しています。

 

コインランドリー躍進の行動科学的分析

コインランドリーがクリーニング店を上回る需要を獲得している理由を、行動経済学や行動心理学、社会心理学の視点から分析すると、いくつかの重要な理論やバイアスが関与していることがわかります。

タイムパフォーマンス(Time Performance)と時間割引(Time Discounting)

現代社会では、特に共働き世帯が増加しているため、時間の効率が重視されています。コインランドリーは、クリーニング店に比べて洗濯と乾燥が即座に完了するため、「タイパ(タイムパフォーマンス)」が良いと感じられます。消費者は時間割引の理論に基づき、将来の利益よりも現在の利益を優先するため、即時的な結果が得られるコインランドリーを好む傾向があります。

認知的負荷の軽減(Cognitive Load Reduction)

コインランドリーでは、洗濯物をその場で洗濯・乾燥できるため、再度引き取りに来る必要がありません。このシンプルさは、忙しい消費者にとって大きなメリットです。複雑な手続きを伴わないシステムは認知的負荷を軽減し、手軽に利用できるため、コインランドリーが選ばれやすいのです。

損失回避(Loss Aversion)

人は損失を避けたいという心理が強く働きます。日本特有の黄砂、花粉、ゲリラ豪雨など、天候によるリスクを避けるために、屋外干しを避けてコインランドリーを利用する人が増加しています。損失回避の理論に基づき、予期せぬリスクを回避するために、コインランドリーを選択する消費者が多いのです。

社会的証明(Social Proof)

コインランドリーの店舗数が増加し、多くの人が利用するようになると、他の消費者も「自分も利用しよう」という社会的証明が働きます。特にカフェやおしゃれな空間と併設されたコインランドリーの増加により、幅広い層の人々が利用するようになり、その結果、さらに利用者が増えていくというサイクルが形成されています。

選択のパラドックス(Paradox of Choice)

クリーニング店ではどの店舗に預けるか、いつ引き取るかなど、複数の選択肢が必要ですが、コインランドリーはその場ですぐに作業を完了できるため、選択の幅が狭く、決断が容易です。選択肢が少ない方が、消費者はスムーズに意思決定を行えるため、コインランドリーが優先される結果となっています。

 

まとめ

コインランドリーの需要は、共働き世帯の増加やライフスタイルの変化に伴い、今後も拡大していくことが予測されます。2023年時点で、共働き世帯は10年前と比べて約2割増加しており、時間効率を重視する消費者ニーズが高まっています。また、シェアハウスの普及や天候リスクを避けたい消費者が増えていることから、家庭外で洗濯を行う習慣は今後も定着するでしょう。

さらに、技術の進化がコインランドリー市場を発展させる可能性があります。例えば、AI技術を活用したAIスマートランドリーは、衣類の素材や汚れの状態を自動で認識し、それに応じて最適な洗濯方法を提案するサービスです。このようなサービスにより、洗濯の手間や時間が大幅に削減され、消費者はより快適で効率的な体験を享受できるでしょう。

  • - 衣類の自動認識: AIが衣類の素材や汚れ具合を分析し、最適な洗濯方法を自動設定。
  • - 最適な洗剤の自動投入: AIが適切な洗剤を選び、必要な量を自動で投入。
  • - 遠隔操作と通知機能: スマートフォンで洗濯の進行状況を確認し、完了時に通知を受け取れる機能。

進化し続けるコインランドリー - AIスマートランドリー(DALL・Eで作成)

共働き世帯の増加、シェアハウスの普及、そして天候リスクの増加が背景にある現在、コインランドリーの需要が今後も拡大することは確実です。さらに、AIやIoT技術を活用した新しいサービスの導入により、消費者のニーズに応える次世代型のコインランドリーが登場することが期待されます。

 

次回も、ビジネスに役立つ行動経済学の理論を紹介します。お楽しみに!