皆さん、こんにちは。
本ブログは行動経済学を実際のビジネスに適用していくことを主目的としています。
行動経済学の理論を中心に、認知心理学や社会心理学などの要素も交え、ビジネスの様々なシーンやプロセス、フレームワークに適用し、実践に役立てていきたいと思っています。
8/30の日本経済新聞に『商店街が人を呼ぶ 「毎日の買い物」に代わる魅力とは』という記事が掲載されていました。
「商店街」というと、「閑散とした」や「シャッター街」など負のイメージが先行してしまう傾向がありますが、そのイメージとは裏腹に「商売」以外の面や他との連携で復活の兆しを見せている商店街もあるようです。
今回のコラムでは、そんな商店街の衰退と再生への道を行動経済学的観点で探求していきたいと思います。
商店街の衰退の現状
日本経済新聞の記事にもある通り、近年、日本の多くの商店街は衰退の一途をたどっています。例えば、1994年には全国に14,000余りあった商店街が、2021年には12,000強へと減少しました。この約15%の減少は、商店街が直面している厳しい現実を浮き彫りにしています。また、2021年度の商店街実態調査では、7割弱の商店街が「衰退」または「その恐れ」を感じていると報告されています。これらの数値は、商店街の再生が必要であることを強く示唆しています。
商店街の衰退の原因
商店街の衰退の主な原因として、以下の点が挙げられます。
人口減少と高齢化: 若者が都市部に移住する傾向が強まり、地方の商店街では顧客の減少が進んでいます。また、店主の高齢化が進み、引退が相次ぐ一方で、新規の後継者が不足しています。
ショッピングセンターやECの台頭: 便利で多くの品物が一箇所で揃うショッピングセンターの普及や、オンラインショッピングの利用増加により、商店街への来訪者が減少しています。
しかし、こうした課題に対しても、行動経済学の視点を取り入れることで、商店街を再活性化するための新たな道が見えてきます。
行動経済学的視点から見る商店街の衰退
行動経済学では、人々の意思決定が常に合理的ではないこと、そして心理的バイアスや社会的影響が大きな役割を果たすことを前提としています。商店街の衰退を引き起こしている主な要因を行動経済学の視点から分析してみましょう。
現状維持バイアス: 消費者は慣れ親しんだショッピングスタイルを変えることに抵抗を感じます。ショッピングセンターやECサイトの利便性に慣れてしまうと、再び商店街を訪れるという行動を取るのは難しくなります。
社会的証明の原理: 商店街が閑散としていると、人々はその場所に価値を感じなくなり、さらに訪れることが少なくなります。逆に、賑わっている店舗やイベントがあると、他の人々もその場所を訪れたくなるという連鎖が生まれます。
アンカー効果: 人々は最初に得た情報や経験を基準に判断を行います。商店街が独自の体験や新たな価値を提供することで、この基準を変え、消費者に新しい魅力を感じさせることができます。
商店街の復興に向けた行動経済学的戦略
商店街を再活性化するためには、行動経済学の理論を活用した戦略が効果的です。以下にいくつかの具体的なアプローチを紹介します。
コミュニティの再構築: 例えば「トビチ商店街」では、店主が自ら店舗を改装し、地域のコミュニティと深く関わることで、商店街の価値を再評価する動きを促進しています。地域とのつながりを強めることで、商店街は単なる「買い物の場所」ではなく、「コミュニティの中心」として再認識されるようになります。
独自性と経験価値の提供: 「沼垂テラス商店街」や「SEKAI HOTEL」のように、商店街が独自の体験やレトロな雰囲気を提供することで、アンカー効果を活用し、訪問者の新たな価値観を引き出します。商店街を訪れる理由が単なる買い物以上のものになるような工夫が重要です。
データに基づくナッジ戦略: 「松山中央商店街」では、AIカメラを使用してデータを収集し、イベントの企画や店舗運営を最適化しています。これにより、消費者の行動をナッジ(軽い後押し)することで、望ましい行動を誘導し、商店街全体の活性化につなげています。
まとめ
商店街の衰退を克服するためには、過去の繁栄を取り戻すのではなく、新たな価値を提供し、消費者の行動を促すことが求められます。行動経済学の視点を取り入れることで、商店街の新しい魅力を創出し、地域の文化や歴史を体験できる場所として再評価される可能性があります。今後も多様なアプローチを通じて、商店街の持つ潜在的な力を最大限に引き出していくことが重要です。
このように、行動経済学の視点を取り入れた商店街の再生戦略は、単なる商業活動の枠を超え、地域の活性化やコミュニティ形成に大きな役割を果たすことが期待されています。
今回はここまでにします。また次回!