ビジネス×行動経済学

行動経済学や行動心理学など行動科学の理論やバイアスをビジネスに適用することを目的にしたブログです

キャッシュレス×行動経済学

皆さん、こんにちは。

 

本ブログは行動経済学を実際のビジネスに適用していくことを主目的としています。

 

行動経済学の理論を中心に、認知心理学社会心理学などの要素も交え、ビジネスの様々なシーンやプロセス、フレームワークに適用し、実際のビジネスでどのように活用できるかを考察していきます。

 

さて、今回は、日本におけるキャッシュレス決済の市場動向と、消費者行動に与える影響について、行動経済学の視点から探求していきたいと思います。

 

日本におけるキャッシュレスの普及と現状

近年、日本でもキャッシュレス決済が急速に普及しています。

 

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が発表した『キャッシュレス・ロードマップ 2023』によれば、2022年時点でのキャッシュレス決済比率は36.0%に達しています。

 

日本国内では急速な普及の兆候が見えてはいます、数値を相対的に見ると、世界の主要国からはまだ後れを取っている現状があります。

主要各国のキャッシュレス利用比率の比較

例えば、中国ではWeChat PayやAlipayが広く普及しており、特に都市部では、現金を使う消費者は少数派になっています。

 

実際、筆者が中国を訪れた際、コンビニで並んでいた10人程度のうち、現金を使用していたのは私だけで、他の全員がスマホ決済を利用していました。

中国人の友人は「財布を忘れても問題ないが、スマホを忘れると何もできない」と言っていたのが、如実に現実を反映しています。

 

このように、海外ではキャッシュレスが日常生活の隅々にまで浸透しているのです。

 

キャッシュレスが消費者行動に与える影響

キャッシュレス決済の普及が進むと、どのようなビジネスへの影響が出てくるのでしょうか?

行動経済学の観点から考えると、特にプロスペクト理論が、キャッシュレス決済が消費行動に与える影響を理解するための鍵となります。

 

現金を使用する場合、消費者は物理的にお金が手から離れる瞬間に「損失」を感じますが、この損失感が慎重な消費行動を促す要因となっています。

一方で、キャッシュレス決済の場合、デジタル上での取引は物理的な損失感をほとんど伴わないため、消費者は支払いの心理的負担を軽く感じる傾向があります。

クレジットカードやスマホ決済では、支払いが一瞬で完了するため、支出に伴う痛みが弱まり、結果として消費が増加する可能性が高まるのです。

 

キャッシュレスと行動経済学でビジネスを加速させる

キャッシュレス決済を導入することで、ビジネスにおいても多くのメリットが生まれます。

 

例えば、ある調査では、キャッシュレス決済を導入した店舗では、現金支払いのみの店舗に比べて売上が20%以上増加したケースも報告されています。

キャッシュレス化が消費のハードルを下げるため、売上の増加が期待できるのです。

 

利用者側にメリットがあるのはもちろんのこと、販売側の小売業界や飲食店にも、お釣りのための小銭を用意する手間が省けるようになるなど、業務の効率化にもつながります。

 

また、各国から後れを取っているとはいえ、シニア層でのキャッシュレス化が進んでいることも、ビジネスという面では良い兆候です。

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一方で、キャッシュレスは急速に進んできた。特に目立つのが、現金志向が根強いといわれてきたシニア層だ。2023年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、5000円超〜1万円以下の支払いに現金を使う人は60代で34%と、5年前の75%から半減した。20代の35%と同じ水準だ。世代間の「キャッシュレス格差」は急速に縮小している。

これまで現金志向が強かった世代も、キャッシュレス決済の便利さを享受するようになりつつあります。

世代間のキャッシュレス格差が縮小している今、ビジネスはこれを活かして、さらに幅広い層に対するサービス展開を考えるべきです。

 

時代に逆行する新札発行

そんな中での新札発行は本当に不可思議です。

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財務省によると6月末までに金融機関のATMは9割以上、スーパーなどのレジは8〜9割が新紙幣に対応する見込みだ。

新札対応に使う費用をキャッシュレス対応に使う方が、先日も書いた通りインバウンド場が回復、成長傾向にある中ではメリットが大きいはずです。

キャッシュレス決済不可に戸惑う外国人観光客(DALL・Eで作成)

まとめ

日本におけるキャッシュレス決済の普及は急速に進んでいますが、世界と比較するとまだ後れを取っている現状です。

しかし、特にシニア層を中心にキャッシュレス化が進んでいることは、今後のビジネス展開において大きな可能性を秘めています。

行動経済学の視点から見ても、キャッシュレス決済は消費者に「損失」の感覚を薄め、支出のハードルを下げる効果があるため、売上増加が期待できるツールです。

 

この機会を活かし、幅広い層に向けたキャッシュレス対応を進めることが、ビジネスの成長に繋がります

新札発行など現金利用の推進が依然として続く中で、キャッシュレスの利便性と優位性を強調し、さらなる普及を図ることが今後ますます求められていくでしょう。

 

さて、今回はここまでとします。

次回の更新は8/26(月)10:00の予定です。お楽しみに!